バリ島と聞くと、美しいビーチや高級リゾートを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、リゾートエリアから一歩離れると、そこにはまったく異なる表情のバリ島が広がっています。
今回参加したのは、「日本人兵も眠るマルガ英雄墓地とジャティルイ棚田・タマンアユン寺院」を巡る日帰りツアー。歴史・文化・世界遺産の絶景を一度に楽しめるコースです。
朝8時にホテルを出発し、17時に戻るまで、日本語ガイド歴30年のアグースさんと過ごした充実の1日をお伝えします。
集合場所は、宿泊ホテルのロビー。
メインストリートで車を待つという勘違いをしてしまいましたが、JTBのスタッフからすぐに日本語で電話があり、無事合流できました。
送迎車に乗り込んでまず目に入るのは、清潔感のあるベージュのレザーシート。
車内には3タイプの充電ケーブルが用意されており、移動中にスマートフォンを充電できます。
迅速な対応や細やかな気配りが、海外でも徹底されているのが日系旅行会社ならではの安心感を覚えました。
ガイドのアグースさんは日本語が堪能で、移動中もバリの歴史や文化、暮らしについてテンポよく解説してくれます。
バリ島の家には寺院や祭壇が設けられていること、家の前に供える「チャナン(花のお供え物)」は方角によって花の色が異なること、バリの門には2種類あること……
車窓から見える何気ない街並みも、背景を知ることで違った景色に見えてきます。
移動時間がそのまま学びの時間になりました。
最初に訪れたPura Taman Ayun(タマンアユン寺院)は、1634年に創建されたムングウィ王国の王室寺院。
「美しい庭園」という意味を持つその名の通り、お堀に囲まれた境内にメル(Meru)と呼ばれる多重塔が美しく整然と並ぶ景観が見どころです。
境内は「悪魔のエリア」「人間のエリア」「神のエリア」の3つのエリアに分かれており、いたる所で見かける白黒チェック模様には意味があります。
黒と白は相反する存在を表し、その調和を象徴している
寺院の門は「阿(ア)」と「吽(ウン)」の一対で構成されており、日本の「阿吽」にも通じる考え方があると教えてもらいました。
さらにバリ島には、日本のお盆に似た行事「ガルンガン」があります。先祖の霊が地上に戻ってくる祭礼で、2026年のガルンガンは6月17日に行われました。一番高い11段のメルは、この時期に神々が降りてくる場所とされているそうです。
柔らかい光に照らされた寺院は神秘的で、見学するなら午前中がおすすめです。
阿吽とお盆。日本人として、バリ島とのつながりを感じることができてうれしくなりました。
次に訪れたのは、バリ島中部の山麓に広がるユネスコ世界遺産「バリ州の文化的景観」を構成する棚田の一つJatiluwih Rice Terrace(ジャティルイ棚田)。
バリの伝統的な水利組合「Subak(スバック)」が千年以上守り続けてきた、美しい棚田の景観です。
ここで栽培される伝統的なバリ米は、年1〜2回しか収穫できない希少品種。一般的なインディカ米よりも希少価値が高いともいわれます。
棚田内の遊歩道は高低差がほとんどなく、往復約30分で気軽に散策できます。
私が訪れたのは6月下旬。天気が良く、澄み渡る青空と青々とした稲の緑の中を散歩できるのは、この時期だからこそ。乾いた風 が気持ちよく、心身ともにリラックスできました。
なお、棚田の稲穂を持ち帰るのは禁止なので注意しましょう。
散策の途中にはカフェもあり、疲れたら一休みすることもできます。
今回のランチはJatiluwih Resto(ジャティルウィ・レストラン)でのビュッフェ。
棚田を一望できるロケーションも魅力ですが、特に印象に残ったのは赤米です。食べてみると、一般的なインディカ米とはまるで別物で、もちもちとした食感と豊かな風味が楽しめました。
ドリンクはアボカドジュースが隠れた名品。なめらかでクリーミーな味わいは、ぜひ現地で試してみてください。
最後に訪れたのはTaman Pujaan Bangsa Margarana(マルガ英雄墓地)。1946年11月20日にインドネシア独立のために戦った人々を追悼する場所。
バリ島の空港名の由来となった英雄、イ・グスティ・ングラ・ライの名もここに刻まれています。
墓石の中には11人の日本人の名前も刻まれています。なぜこの地に残ったのかをガイドのアグースさんに聞くと「インドネシアが好きだったからです」と静かに答えてくれました。
また、インドネシア独立に関わった日本人として広く知られているのが、前田精海軍少将です。1945年8月17日のインドネシア独立宣言の舞台裏で、ジャカルタの公邸を宣言文の起草場所として提供し、独立運動家たちを支えた人物です。
日本人として知らない歴史がまだまだあること、そして私たちの先人たちがあの時代、異国の地でどのような思いを抱えていたのか……。
今回ツアーの中で一番心に残ったのはこの場所で、日本人として忘れてはいけない多くの気づきを、改めて考えるきっかけになりました。
バリ島の観光ベストシーズンは、一般的に6〜8月。湿度が低く爽やかな風が吹くため、一年の中でも特に観光しやすい季節です。
ビーチリゾートだけではない、歴史や文化、そして世界遺産の絶景に出会えるのもバリ島の大きな魅力。
リゾートとは一味違う体験として、ぜひ少し足を延ばし、奥深いバリ島の魅力を体感してみてください。