シンガポールの人はどんな場所に住んでいるの?
シンガポールはどんな教育制度なの?
ここでは「シンガポール人」の礎となる暮らし・教育をお話します。
旅先で出会うシンガポール人との会話も盛り上がるかも!?
シンガポールの住宅事情について〜HDBとは?

HDB は「Housing Development Board」の略で、シンガポール国民を対象とする公団住宅のことです。
1960年代に多数の国民は不衛生で混沌としたスラム街で生活し、ほんの9%が政府の団地に暮らしていました。政府は早急な住宅建設を進めるため、1960年に住宅開発庁を設立し、1965年の独立を経て現在では約100万戸の供給を数え、HDB住宅購入を促進する「持ち家政策」のもと、住民の持ち家率は約9割に上りました。綿密な都市計画に基づいて建てられたHDB団地は、シンガポール発展の歴史を語る上で欠かせない存在でもあります。現在、約8割の国民がHDB団地に住んでいます。原則としてはシンガポール人のためにつくった住宅ですので、HDB団地を購入できるのはシンガポール国民と永住権を保有する外国人「Permanent Resident: PR」のみです。外国人居住者はHDB団地の賃貸のみとなり、購入は不可となります。限られた国土の中で次世代の暮らしや経済を拡充するために、シンガポール政府は99年の賃貸借契約と言う形で、個人所有を一定期間認めています。個々の国民に対するニーズと予算に幅広く応えられる住居タイプを表のようにまとめました。
Source: Draws upon Housing & Development Board, 2017.
都市再開発庁「Urban Redevelopment Authority: URA」の方針に沿い、HDB団地は優れている立地に建築され、敷地内に学校や商業施設、病院、公園、交通機関、スーパー、ホーカーズなど日常生活に必要な施設を揃えることで、地域住民の生活利便性を向上することができます。トアパヨにある住宅開発庁のビル「HDB HUB」1階のロビーでは、今後再開発を予定しているエリア、新規のプロジェクトなどが模型で詳しく紹介されています。興味のある方は是非訪れてみてください。
<HDB LIVINGSPACE>住所:HDB Hub, Basement 1 (near Toa Payoh Room), 480 Toa Payoh Lorong 6, Singapore 310480
では、外国人はどこに住んでいるの?
少数のシンガポール人を含め、日本人駐在員などの外国人はコンドミニアムに住んでいることが多いです。コンドミニアムとは、HDBより高層でジムやプール、テニスコート、バーベキューピットなどの共用施設が敷地内にある高級マンションです。値段はHDBよりはるか高くなっていますが、入口にはたいてい24時間体制でセキュリティーがいるので、安全性ばっちりの住居です。そして、少数派が戸建て(テラスハウス、セミディタッチトハウス、バンガロー)に暮らしています。シンガポールのビジネス雑誌「Singapore Business Review」によって行われた2018年の研究によると、シンガポールで一戸建て住宅を購入できるのは所得上位5%の層に限られています。2階から4・5階建くらいの住宅が数件連なって建てられているテラスハウスは、最も一般的なチョイスです。最後に、米朝首脳会談が行われたセントーサ島の東部にあるセントーサコーブは、シンガポールの超富裕層が住む別世界と言われています。シンガポールの超高級不動産エリアとして世界的に知られ、不動産価格が数十億円もするセントーサコーブには、有名な大富豪達が多く住んでいます。これらの住宅は、シンガポールで唯一個人所有のヨットが停泊できるエリアが設置されている居住地域です。
シンガポールの教育制度について
シンガポールの教育制度は、世界でも注目されるトップクラスのレベルです。シンガポールでは教育省(Ministry of Education: MOE)が公立校・政府補助校の管理運営に対する監督や私立学校設置等の認可等を行いながら、シンガポールの教育政策を推進し生徒の学力に合った教育システムを構築しています。政府が認定する資格試験により生徒はその進路が決定されます。
初等教育・小学校 (Primary School) 6年修了時の初等学校卒業試験 (PSLE: Primary School Leaving Examination) は“学歴社会”と呼ばれるシンガポールでもっとも節目となる試験です。
その後の中等教育・中学校 (Secondary School) 4 - 5 年修了時にも、生徒の属するコースにより、シンガポール・ケンブリッジ「普通」教育認定試験 (GCE-O (Ordinary) Level)、「通常アカデミック」教育認定試験 (GCE-N(A) (Normal Academic) Level)、「通常テクニカル」教育認定試験 (GCE-N(T) (Normal Technical) Level) を受験。中等教育後には、高校卒業試験のシンガポール・ケンブリッジ「上級」教育認定試験 (GCE-A (Advanced) Level) が設定されています。
シンガポール政府2016年の調査により、15歳以上のシンガポール国民の識字率は97%。これは日本の識字率99%とほぼ同等。その上、大部分は2言語を使用するバイリンガルであり、共通語及び第2母語としての英語と、自分の母語(中国語、マレー語、またはタミル語 )を第2言語として初等教育の段階にて習得する必要があります。シンガポールの学校では母語授業以外の全教科が英語化されています。
中等教育後の技術専門学校/ポリテクニック(Polytechnic) と技術教育専門学校 (Institute of Technical Education: ITE) では言語の授業がありませんが、プレゼンテーションや講義などは英語で行われています。義務教育化されている小学校の教育は7歳から12歳までです。それからの進学コースは各過程での試験の成績と希望によって異なります。
シンガポールの進学コースマップも参考にご覧ください。
<シンガポールの小学校>
義務教育化されているシンガポールの初等教育・小学校は、4年間の基礎教育機関と2年間の上級教育機関の6年間教育です。初等教育の全体的な目的は、英語、母語と数学の理解力を高めることです。シンガポールの義務教育は小学校までで、シンガポール国民は政府と政府補助により学校における学費は一切かかりません。生徒は月あたりSGD6.50ドルから13ドル(2021年11月のレート換算で約546円から1092円)の雑費のみを支払います。
<シンガポールの中学校>
中学校では、初等学校卒業試験(PSLE)の成績によって、各生徒に合ったコース、主に「エクスプレス」「通常(アカデミック)」「通常(テクニカル)」コースに分けられます。このコース選別は先の進学コースにも大きく影響しています。
•中学校の教科は英語、母語(上級中国語・標準中国語・マレー語・タミル語)、科学(物理・化学・生物)、数学、上級数学、財務会計、人文科学(社会・歴史・英語・地理)、 デザイン&テクノロジー、芸術、音楽です(一部科目は選択制)。
•GCE-Oレベル試験で優秀な成績をおさめた生徒は、ジュニア・カレッジ、中央教育学院やポリテクニックに進学します。判定は、Oレベル試験の総得点から計算されるポイントをもとに決められます。
•CCAで活躍した生徒には、CCAボーナスポイントが付与され、そのボーナスポイントはGCE-O、N(A)、N(T)レベル試験の総得点ポイントに加算されます。そのため、CCAへの参加は進学にとても有利とされています。
<部活動 (Co-Curricular Activities - CCAs)>
Co-Curricular Activities(CCA) はシンガポールの学校での部活動です。その内容は日本とは異なり、各民族の文化を反映した、合気道、フェンシング、中国オーケストラ、マレーダンスなどの活動、そしてユニフォームグループと呼ばれる活動があります。
ユニフォームグループとは、トレーニングやリーダシップコースを受講し、思考回路、管理能力、リーダーシップスキルを育てることを目指している活動です。
国家警察少年団(National Police Cadet Corps: NPCC)、国家軍隊少年団(National Cadet Corps: NCC)、赤十字(Red Cross)がその例です。
多くの社会組織が、このユニフォームグループに援助支援を行う事で生徒のコース受講を可能にしています。
<シンガポールの高等教育>
技術教育専門学校(ITE)は中学校の‘通常’コースの卒業生を対象とした技術教育を行っています。講義、実地体験、インターンシップなどで生徒に教科書以外の知識を与え、将来の就職に備えた教育を行っています。基本的に、ITEの生徒は2年のNational ITE Certificate (NITEC)コースを受けます。
ここで一定以上の成績をおさめた場合、さらに2年のHigher NITECコースに進み、そこでもよい成績を残すことができると、ポリテクニックに入学する事ができます。
GCE -Oレベルを受けた生徒には3つの選択肢があります。ジュニア・カレッジ、中央教育学院、ポリテクニックへの進学です。
ジュニア・カレッジと中央教育学院は日本の高校とほぼ同様のカリキュラムです。ジュニア・カレッジは2年で、大学入学を可能とするGCE-Aレベルを受験することができます。中央教育学院では、生徒により多くの大学準備期間を与え、3年制度を採用しています。ポリテクニックは日本の専門学校のような存在で、制服や決まった授業スケジュールもなく、各生徒の希望する内容を選択し学び、日本の大学生のようなキャンパスライフを楽しみます。
<シンガポールの国立大学>
世界トップクラスの教育レベルといわれているシンガポール。2018年にシンガポールの中学生がOECDのPISA調査 (Programme for International Student Assessment)で、数学、科学及び読解力の3分野すべての平均得点で中国に次いで2位を記録し、さらに全世界から注目を集めました。ちなみに2015年には、シンガポールは全項目で第1位を誇っています。
また、11種類の指標でアジア各大学650校を評価している「QSアジア大学ランキング2025」では、シンガポール国立大学(National University of Singapore)が第3位、シンガポールの国立大学のひとつである南洋理工大学(Nanyang Technological University)が第4位となっています。
ちなみに日本の東京大学は、このランキングで21位に位置しています。
<シンガポールの私立高等教育機関>
シンガポールには私立高等教育機関が数多くあります。これらの機関では提携大学の学位 (学士号、修士号と博士号) を提供する海外学位プログラム(External Degree Program)を設けています。
各私立高等教育機関での学位プログラムは、国立大学での学位取得よりもはるかに短期間で設定されていますが、授業料はかなり高額です。学位証明書の認定も教育機関によって異なります。
シンガポールでは私立教育委員会 Committee for Private Education (CPE)を設置し、数多くの私立教育機関の運営を統制しています。例えば シンガポール内で海外学位プログラムを提供する私立教育機関に対する、EduTrustと呼ばれるCPEが設けた私立教育機関があり、EduTrustによる評価制度受審の義務付けや、卒業生就業状況調査への参加義務化、シンガポールにて海外学位プログラムを受けようとする学生に対する学力要件の設定や、CPEの提携機関による信用格付けの取得の義務化を行っています。これにより質の高い教育機関のレベルを保ち、国内外からの生徒を集めているのです。
これらの私立教育機関では、社会人を対象としたパートタイムのプログラムも設定しています。日中は会社で働き、夜に受講するという、夜間のコースが一般的です。
日中は社会人、そして夜は学生と言う二足のわらじの生活ですが、仕事と学業のバランスを取るのは決して簡単ではありません。
そこに向学心のある、様々な国籍の生徒が集まっています。